院長コラム

片頭痛の慢性化

疾患説明

慢性片頭痛とは

普段から片頭痛で困っている人がひと月のうち半分以上の日数で片頭痛が起こるようになることを慢性化と呼びます。このような状態になってしまうと片頭痛の薬を飲んでも頭痛が治まりにくくなるうえに頭痛自体が起こりやすくなってしまい日常生活に支障が大きく出てしまいます。この慢性化が起こりやすい4つの原因を紹介いたします。

慢性片頭痛の定義

国際頭痛学会の診断基準によると、月に15日以上の片頭痛が3ヵ月以上続いている場合などが当てはまる状態になると慢性片頭痛と診断されます。

単純に計算すると、このような人では週の半分以上の日で片頭痛発作が起こっていることになり、頭痛の薬を毎日のように内服していることになります。また、頭痛の性質や感じ方も変化していることが多くて、頭痛を感じ始めたころはズキンズキンとした脈打つような拍動性の痛みが起こっていたのに、慢性化することによってこの拍動性の痛みは徐々にはっきりしなくなっていき、頭痛発作時に生じていた悪心や光を眩しく感じたりという症状が軽くなったりしてきます。慢性化すると薬の飲みすぎにも注意が必要ですが、片頭痛発作が続くために寝てばかりとなり、仕事や日常生活に影響が及ぶことで生産性も悪くなることから、慢性片頭痛に対する治療を積極的に進めることが大切です。

慢性片頭痛になり易いパターン

慢性片頭痛になり易いパターンがあり、次の4つの項目のうち一つでも当てはまると注意が必要です。1.先天性要因 2.頭痛の病状 3.共存症 4.外的要因 に分類されています。この中の一つでもあると慢性化しやすいとされていますので、各々についてどのようなことであるのかを具体的に説明いたします。

先天性要因 

家族歴と出生前暴露といわれています。家族歴の例としては母親に慢性的な頭痛(月に15日以上で3か月以上)があるとその子供が慢性片頭痛になりやすい傾向があります。出生前暴露とは妊娠中に母親が飲酒をしていたり喫煙をして過ごしていた場合に生まれてきた子供が慢性片頭痛になりやすいとされます。妊娠中の方は子供の将来の影響も考えて飲酒と喫煙には注意しましょう。

頭痛の病状 

頭痛がする日数が多いと慢性化しやすいです。月に15日以上が3ヶ月を超えて続くのが慢性片頭痛なので、これに近い日数の頭痛がある方は要注意です。予防療法を受けていただくことで頭痛の日数を減らすことができれば心配がいらなくなります。

共存症 

肥満やいびき・睡眠時無呼吸、精神病やストレスの多い生活、顎関節症、歯周病などとされています。ストレスが多いとつい甘いものを…っていう習慣があるとなかなか解消しづらい問題です。さらに悪循環に入ってしまうと頭痛を抑えるのがさらに難しくなるために、どんどん慢性化しやすい状態へと陥ってしまうので注意が必要です。また、うつ病やうつ状態で悩んでいる方も慢性化しやすいです。頭痛の治療と並行してこれらの病気への治療も取り組みましょう。口腔内の状態や顎関節症でも頭痛の慢性化しやすいとされていますので、歯科治療もしっかりと受けておくことが大切です。

外的要因 

過剰な鎮痛薬の服用やカフェイン摂取、頭頚部外傷です。鎮痛薬の飲みすぎによる頭痛(薬物乱用頭痛:MOH)とは異なるので区別が必要なのですが、身体の他の部分(肩とか腰とか生理痛とか)の痛みが続いていることから痛み止めを飲むことが多い場合、さらに頭痛がするときに痛み止めを飲んでも効きづらくなってきたりするために鎮痛薬の飲みすぎになりがちです。カフェインの場合は仕事や原稿の締め切りが迫っているとか、試験勉強で徹夜とかで取り過ぎることがあります。日常的に飲んだりすることを控えるように意識するようにしましょう。頭頚部外傷でイメージしやすいのは追突事故で生じるむち打ち症です。なかなかスッキリせず身体の動きで頭が痛むので痛み止めを飲むことも多くなりますし、怪我の影響自体が慢性化の原因になります。

慢性片頭痛の治療

これらに当てはまる場合はいろいろな要素が相まって慢性化しやすいです。薬を飲むことで治療をすることが基本となりますが、これらの原因が根本的に解消できることが理想です。しかし、頭痛を何とかすることが日常生活にとっては大切なので痛みを抑える治療を行って頭痛が軽くなってきてから元の要因を解消する方針へ切り替える方がいいです。

片頭痛の治療をしている方で、慢性化してしまう方は年間3%位います。上記のような慢性化しやすい方の場合は治療をしっかりと進めていく必要があります。

治療の方針としては片頭痛の発作予防療法を強化しつつ、中枢性感作という現象を抑える必要があります。これは脳の中で痛みを感じやすくなっている状態のことです。この状態を治すためには安定剤の系統の薬が効きますが、すぐには治ってこないのでしばらくの間は薬を飲み続けて治療を行います。また、2012年から使用が可能となった抗CGRP関連抗体薬を併用するのもお勧めです。

最後に

慢性片頭痛の治療は長期戦となりますが、少しずつ頭痛のない日常生活を取り戻すためにも一緒に頑張りましょう!