片頭痛

片頭痛とは

片頭痛・偏頭痛典型的な片頭痛としては頭のどちら側かが脈打つようにズキンズキンと痛くなるものです。これに加えて中等度から重度の頭痛であり、動作により悪化するといった特徴を持っていて、痛みの持続時間は4〜72時間というものが片頭痛の診断基準になっています。さらには頭痛が起こる前に閃輝暗点といった典型的な前兆がある人もいればこれがない人もいるのと、片頭痛の発作が起こっているときにめまい感を伴うのか、片麻痺が一緒に出たりしているのかなどの特徴により病名を区別していきます。片頭痛の発作時には吐き気や嘔吐が伴っていたり、光や音、臭いに敏感になってしまい暗くて静かな場所で寝込んでいたりする特徴もあります。
普段起こる頭痛がこのような特徴に当てはまるのかを考えてみてください。もしも片頭痛の可能性が高い場合には片頭痛用の薬が有効である可能性があります。また、子供の片頭痛では両側性であることが多いとも言われています。

片頭痛の原因

片頭痛になる人となりづらい人がいます。何故このような差があるのかは解明されてはいません。
どれくらいの人に片頭痛があるのかを調べた研究報告によると、日本人での有病率は8.4%で30歳代の女性に一番多いことがわかっています。
片頭痛の人の頭の中ではどのようなメカニズムで片頭痛が起こるのかを諸施設で長年にわたり研究しており、現在のところ三叉神経血管説が原因として有力です。
これは三叉神経が敏感になってその刺激により脳に張り巡らされている血管へ影響を与えてこれらの血管が拡張することで痛みが起こるとされています。
このようなメカニズムに基づいて治療の薬が研究・開発され、効果が得られています。

片頭痛を引き起こしやすい状況

片頭痛を引き起こしやすい誘因は、いくつか明らかになっています。
具体的にはストレスや月経、天候変化ですが、さらに疲れや睡眠の過不足、食事、たばこ、運動、光なども言われており様々なものが関係しています。
これらを分類して次の5つの因子が片頭痛の発作の誘因として深くかかわっているとされています。

  1. 精神的因子
  2. 内因性因子
  3. 環境因子
  4. ライフスタイル因子
  5. 食事性因子

明らかな誘因がないこともありますが、誘因により刺激されることで予兆が始まります。片頭痛発作が起こる数時間から2日前に始まるとされており、予兆でみられる症状としては食欲が増加したり、眠気や生あくびが出たりするほか、だるさやむくみが生じるといわれています。

精神的因子

睡眠不足精神的因子とは具体的にはストレスやストレスからの解放、疲れ、睡眠の過不足になります。片頭痛の人がよく経験することとして、仕事中に頭痛がひどくなり始めたり、あるいは仕事から解放された休日や週末に限って頭痛が出て折角の休みなのに出かけられなくなったりということが当てはまります。このような経験をしたことがある方は多いと思います。

睡眠は明日が休みの日だからといって夜更かしをするとか普段より長い時間寝ている、または仕事が忙しくて帰るのが遅くなり就寝が遅くなって睡眠不足になっているということが当てはまります。日常生活において管理することは難しい問題でありますが、片頭痛の発作を予防するには可能な限り規則的な生活がいいようです。

内因性因子

内因性因子とは女性特有の問題ですが、月経周期のことです。片頭痛の発作が女性ホルモンに関連している人が多いために、生理中には頭痛もするという傾向のある人にとっては、経験上理解しやすいことと思います。
この時期は辛いのが頭痛だけではないこともあり、どうしても痛み止めの内服が多くなると思います。

環境因子

環境因子として代表的なものは天気です。特に雨が降り始める前に嫌な感じがするといったことを頭痛になりやすい人はとても多く経験されていると思います。そのほかの環境因子には室内外における温度差やにおい、音、光になります。
空調が良く効いている建物では、室内外で温度差の激しくなる夏場や冬場の環境、または雨の後に晴れ上がって日差しが強く気温が急上昇することで痛みが誘発される場合になります。また、季節の変わり目で前日との気温差や一日の気温差が大きくなるような季節変化で影響を受けることもあります。日本は四季の変化がはっきりしているので、人によってはつらい時期が決まっていたりします。
さらに、臭いで片頭痛の発作が誘発されるのもよく見られます。この臭いの種類については香辛料などの食品だったり、洗剤・柔軟剤のものだったり、香水だったりします。ときにはアロマなどの芳香剤や新築の建物のにおいだったりします。

ライフスタイル因子

ライフスタイル因子とは、運動や食事制限、性的活動、旅行になります。旅行は環境因子と似ていますが、温度差があったり、時差があったりと変化が大きい場合には片頭痛の発作の誘因となります。もちろん、居室の環境が変わりますし、枕が変わることで眠りづらいなど睡眠不足になる場合もあると思います。
そのほかにはダイエットしようと決意して、急に激しい運動を行ったり、極端なカロリー制限を行ったりすると片頭痛の発作の原因となります。少しずつ段階的に行っていくと発作が起こらなくて済むようなので、極端なことを避けるように心掛けてください。

食事性因子

アルコール・ビール食事性因子は空腹や脱水、アルコール、特定の食品になります。チーズやワイン、チョコレートは誘因として有名なのですが、他の食品成分としてはうま味調味料として使われているグルタミン酸の取り過ぎでも誘発されると言われています。
さらに、原因と考えられる食品は多いものの、実際に影響を及ぼすものは人それぞれであることと、過剰な制限や気になりすぎるという行動自体がストレスやフラストレーションとなり片頭痛の誘因となり得るので、完全に取り除いたりするのではなく程よいバランスで生活を楽しめるようにしていくことが推奨されています。

片頭痛の種類

片頭痛の発作は、ある程度決まったパターンがあります。典型的な前兆のある片頭痛の場合では頭痛の発作の起こりやすいきっかけとなる誘因があり、それに続いて予兆・前兆(はっきりとしたものがない方もいます)が生じてきて、片頭痛発作が起こります。
この発作が続く時間は薬を内服しないと4~72時間続き、酷くなると吐き気が出て薬も飲めなくなってきます。
光過敏や音過敏のある人も多いので、発作がひどいときには暗くした部屋で寝込んでしまっていると思います。
片頭痛の発作前に前兆がない人も多く、突然片頭痛の発作が始まってしまうパターンになります。

片頭痛の検査・診断

MRI検査片頭痛の診断は国際頭痛分類第3版(ICHD-3)をもとに行います。
普段から悩まされている頭痛の特徴がどのようなものか、頻度はどれくらいか、前触れ(前兆)はあるか、頭痛と一緒に神経症状が出たりしないかなどを問診にて聞いた上で二次性頭痛かどうかを、MRI検査を中心とした諸検査を行った上で診断いたします。

片頭痛の治療

片頭痛の治療主に薬物療法による治療を行います。片頭痛の発作時に飲む薬と発作を予防する薬に大別されます。
片頭痛の発作に対しては、三叉神経からの刺激により血管が広がることを防ぐための薬を使用します。主にトリプタン系の薬剤がこれに相当します。この薬は三叉神経での変化を抑え脳の血管を縮める働きがあることから片頭痛の発作に有効です。
しかし、飲むタイミングがとても重要で痛みが生じてから1時間までが片頭痛の薬を飲む適切なタイミングです。痛みが起こる前や1時間よりも長く経ってからでは効果が十分に得られないことが分かっています。
また、痛みがひどくなってくると吐き気もでてきて薬が飲めなくなりますので、そのためには吐き気止めを前もって内服したり、水なしで服用できる口腔内崩壊錠を使用したりもします。
ただし、トリプタン系は血管を縮める作用があるため、合併症として高血圧や心疾患、脳血管障害、肝臓病などがある人には処方を慎重に行う必要があります。
このような人の場合では近年ジダン系の片頭痛の発作の薬剤があることから、合併症があってトリプタン系の内服が出来なかった人にも投与が可能です。
ただし、ふわふわとした浮動感が副作用として認められることから、内服してしばらくは休んでいる必要がある人も多いです。電車での移動中とか仕事中とかに頭痛が発生して内服薬を飲むタイミングを逃してしまい、さらに頭痛がひどくなった上に吐き気もあって薬が飲めない状態にまでなると注射薬や点滴が必要な場合もあります。その際には病院を受診して相談することをお勧めいたします。
痛みが強い場合には、片頭痛の発作の薬剤だけでは痛みを抑える成分が入っていないことから、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)も一緒に内服されることがあります。また、片頭痛の発作時には光や音、臭いに対して過敏になっていることも多いので、暗い部屋などで静かに休んでいることもお勧めいたします。

発作の頻度が多い人は薬の内服回数も多くなり、日常生活への支障も大きいことから片頭痛の予防療法を行います。予防療法を開始する目安としては片頭痛発作が月に2回以上、または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある人で、このような方針が日本頭痛学会でも「頭痛の診療ガイドライン2021」にて推奨しています。
予防療法の第一目標は、これまでの片頭痛の回数が半分、痛みも半分になることです。これが達成できてからは飲み薬の量を徐々に減らす方針にしていきます。予防療法には即効性がないものが多く、開始してから効果が出てくるまでには少なくとも3か月かかるのが一般的です。このような理由から、治療を始めてもすぐには諦めずに3か月間は続けてみましょう。