院長コラム

片頭痛の急性期薬

治療方法

片頭痛の痛みがひどい時に使う薬

あのひどい頭痛がまたきたら嫌だと心配になる人は多いと思います。ひどい頭痛の不安感から早めに頭痛の薬を飲もう!…この気持ちはわかるのですが、薬によっては効かないかもしれません。片頭痛の急性期薬であるトリプタン系の薬剤は片頭痛の痛みが出てきてから内服する必要のある薬なので、痛くなってくるまではこの系統の片頭痛発作の薬を飲むのは我慢して、代わりに痛み止めを先に飲んでおくという人は多いようです。

今回はいざ頭痛が始まったというときに飲む薬について、病院で処方されている6種類の薬を紹介します。現在処方されている薬が自分の頭痛に合っているかどうかは内服を続けてみないとわからないので、処方されている分の薬は試してください。ただし、一旦痛みは治まってくるけど、しばらくするとまた痛くなってくる場合には薬の効き目が長いものへ変更した方がいいこともあります。また、薬を飲むと痛みは治まるけれどだるくなったり眠たくなったりする場合には違う薬へ変更するのもいいかと思います。現在、片頭痛の治療薬として病院で処方ができる薬は下記の通りになります。

片頭痛発作時の治療薬は現在2種類の系統があり、トリプタン系とジダン系です。トリプタン系は片頭痛の発作時の薬としてよく用いられているものです。この系統の薬は5種類ありそれぞれに特徴があり使い分けをしています。初期より投与が可能となったスマトリプタンは内服薬だけでなく点鼻薬と注射薬もあります。ジダン系は新しく登場した片頭痛の発作時の薬です。トリプタン系の薬が内服できなかった血管の病気を持つ人も内服が可能となりました。

 

トリプタン系:5種類

トリプタン系とはセロトニン1(5-HT 1B/1D)作動薬です。これらは片頭痛発作の原因とされる三叉神経末での神経原性炎症を抑えるのと血管を収縮させることで片頭痛の発作を抑えます。5種類のトリプタン系薬剤があり、それぞれの特徴について説明します。

スマトリプタン(イミグラン)は初めに登場したトリプタン系の薬です。薬の投与方法は内服薬のほかに、点鼻薬、皮下注射薬(自己注射を含む)があります。内服してから薬の血中濃度が早く上昇することから頭痛に対して早めに効果が発揮されます。しかし、片頭痛の前兆期に内服するのでは効果がないとされ、内服のタイミングが重要になります。片頭痛がひどく重責状態となった場合や嘔気嘔吐がひどくて内服が難しい場合には内服薬に代わって点鼻薬や注射薬を使用できるという特徴があります。
ゾルミトリプタン(ゾーミック)は薬の血中濃度の上昇がゆっくりであることから、効き目が長く続くという特徴があります。しかし、スマトリプタンと同様で前兆期の内服では効果が期待できません。副作用は比較的少ないとされており、口腔内崩壊錠もあることから水なしでの内服が可能です。
エレトリプタン(レルパックス)はスマトリプタンと同様に内服後の薬の血中濃度が早めに上昇することから早めに効いてきます。また、口腔内崩壊錠もあるので水なしで内服ができます。先の2剤と同様で前兆期の内服では効果は期待できません。片頭痛の発作に対する有効性は高い方なので、多くの人が服用されています。しかし、薬の飲み合わせに注意が必要となるものがあるので薬剤師さんに確認していただくことをお勧めいたします。
リザトリプタン(マクサルト)も内服後の血中濃度が早めに上昇するために早く効いてくる特徴があります。口腔内崩壊錠があるために水なしで内服が可能です。エレトリプタンと同様で有効性が高い方であることから多くの人が内服しております。
ナラトリプタン(アマージ)ゆっくりと効いてきますが、薬の半減期が他のものと比べて長いのが特徴なので効果が長持ちします。月経時の片頭痛の発作では頭痛の持続時間も長い傾向にあるためにこの薬が用いられることが多いです。

それぞれの薬の特性だけではなく、その人ごとに効き目の差があることから自分に合ったものを選択していくことになります。処方された薬を試してみて片頭痛発作に効果があったかなどを判断するのですが、薬が効いたかどうかだけではなく、どれくらいの時間で効いてきたのかや吐き気や眠気などは出なかったかなどと、内服した時の発作の重症度や飲むタイミングなども薬の効果に影響があることからこれらを含めて総合的に薬の効き目を判断していきます。
トリプタン系の薬が効かないときの一番多い原因としては内服のタイミングが遅れてしまったことです。その理由には共感できる点が多いのですが、痛み止めよりも高価な薬であることから飲むことをためらったり、処方される薬の数に制限があるために手持ちの数が少なくなって不安になったりすることです。さらには会議中や接客中などで仕事を中断しづらいとき、電車内などの移動中で周囲の人の目もあり飲みづらい、薬を携帯するのを忘れたなどさまざまな要因があります。
また、飲むタイミングを見計らっていたことで内服が遅くなる場合もあります。この頭痛が片頭痛発作かどうかが分からない、いつから痛み出したのかがわからない、痛み止めを先に飲んでいるから効いてきて治まるかもしれない、副作用が出るのが心配、できるだけ自然に治ってくることを期待するなど。このような気持ちもわかりますが、頭痛がひどくなってしまい寝込んでしまうと仕事や家事などの活動が制限されるだけではなく、家族などへも影響が出てしまうのに加え、頭痛がひどくなってからでは薬も効きづらくて非常に辛い思いをするために、片頭痛の薬はいいタイミングで飲むことがとても大切です。

ジダン系:1種類

ジダン系とはセロトニン1(5-HT 1F)作動薬であり、薬が作用する部分がより選択的になった薬です。トリプタン系よりも片頭痛発作を抑えることに絞り込んでいて、痛みに対する効果を発揮する薬です。また、トリプタン系とは違って脳や身体の血管を収縮させないことから、脳梗塞や心筋梗塞などの血管系の病気がある人でも使用することが可能です。現在のところラスミジダンのみが処方可能です。

ラスミジダン(レイボー)はセロトニン1F受容体へ選択的に作用する薬です。これにより片頭痛の発作をおさえます。これまでのトリプタン系は1B/1D受容体へ作用していることから血管の収縮作用があり、既往歴や持病で血管の細くなっている状態の方や脳梗塞・心筋梗塞の方へは使えなかったのですが、1F受容体にだけ作用するために血管の収縮作用がなくなり、今までトリプタン系が内服できなかった片頭痛の患者さんにも服用できるようになりました。また、飲むタイミングが遅くなり片頭痛の発作が始まって1時間以上経ってからでも効果があります。
トリプタン系とは違って、仕事中や運転中、移動中などによって片頭痛が始まったタイミングで薬が飲めなかった場合でも薬の効果が期待できるので、このような機会が多い人にはこの薬を飲んでみることをお勧めします。

さらに、トリプタン系で発作の治療をしている人は経験があると思いますが、薬を飲んだ後に眠気がすることがあります。片頭痛発作の一連の流れで回復期の倦怠感でもあるのですが、このラスミジダンではトリプタン系と違って内服後の眠気が少ないのも特徴とされています。ただし、実際に内服してみるとトリプタンよりも痛みを抑える効果は強いようですが、人によりこの薬の副作用としてトリプタンと同じような眠気やフワッとしためまい感が生じます。仕事中や運転を予定している場合にはこれらの予定を変更していただく方が良さそうです。

余談ですが、トリプタン系が登場する前はエルゴタミン製剤が使われていました。カフェルゴット(現在、販売中止)やクリアミンという製剤で、エルゴタミンが動脈と静脈の両方に対しての血管収縮作用があります。片頭痛発作時におこる過剰な血管拡張を抑えることで片頭痛を抑えるのですが、副作用として嘔気があります。これが皆さんつらいようです。また、妊娠中・授乳中の使用は禁忌とされています。今はあまり処方されていない薬ではありますが、内服されている方は注意が必要です。

いかがでしょうか。今回は改めて片頭痛の発作が起きてから飲む内服薬を解説いたしました。で、効きづらくなってきたり、回数が多くなってきたりすると予防療法の出番になります。このコラムにて予防療法の薬の紹介もする予定です。

頭痛が治まりスッキリとしたお天気のような気分になれることを願っております。