院長コラム

目の前がキラキラ・チカチカ

症状説明

閃輝暗点(せんきあんてん)とは

閃輝暗点(せんきあんてん)はあまり馴染みのない言葉であり、ピンと来ない人も多いと思います。これは一時的な視覚障害の一種であり、視野の一部にキラキラした光の点などが現れる症状で通常両眼に起こります。具体的に表現すると眼がまぶしくてチカチカする、光の点、輝く星、キラキラと光の輪が流れていく、これらの光は点状や光の輪またはギザギザの模様などといろいろなパターンがあります。さらには始めは小さな光の点が出現した後でジグザグの線や眩しい光が見え、次第に視野の外側に広がって視野をさえぎることもあります。

この閃輝暗点に続いてひどい頭痛が起こる場合には前兆のある片頭痛と言われます。この前兆として発生すること以外でも起こる人が多くいるようで、どのくらいの人で出現しているのかの実態はわかりづらいのですが、多くの場合では数分から30分程度で自然に消失します。

頭痛とは関係なく起きる閃輝暗点の場合には注意が必要となることがあります。片側の眼だけに症状が起きるときは、網膜剥離など眼の病気の症状であることがあります。視野や目の前が暗くなる、視野の異常が60分以上続く、短時間に繰り返し何度も起きるなどの症状の場合には、脳梗塞や脳血管奇形など脳の病気が原因のこともあります。症状の診察を受けたうえで、MRI検査などで脳内に原因がないか調べることが重要です。

 


閃輝暗点の原因

閃輝暗点の主な原因はまだ解明されていませんが、視野の症状が現れるときに後頭葉の脳血流が一時的に低下していることが分かっており、これが脳皮質(特に後頭葉)の電気的な刺激の変化による影響で出現するものと考えられています。特にストレス、過労、睡眠不足、月経、光刺激、食事を抜く(低血糖)、特定の食品(例えばチョコレートやナッツ類など)や薬剤などが誘因となるとも言われています。また、アルコールやタバコなど血管の拡張や収縮に関連する要因は閃輝暗点を起こしやすくする可能性があります。

閃輝暗点の治療

閃輝暗点そのものを直接治療する薬はありませんが、片頭痛の予防薬や生活習慣の改善が有効とされています。例えば、抗けいれん薬や抗不安薬、片頭痛の予防薬が処方されることがあります。また、ストレス管理や十分な睡眠を取ることも予防につながるとされます。

薬物治療、その他

治療を始める前に一番大切なのことは、脳に病気がないかどうかを調べることです。頚部(首)の内頚動脈に狭窄があり眼の動脈(眼動脈)の血流が不安定になる、視野や視覚にかかわる後頭葉や側頭葉に脳梗塞や脳腫瘍がある、てんかんの発作、などで閃輝暗点の症状が現れている場合には閃輝暗点の後に頭痛が起こらないことがあります。

閃輝暗点の原因としてこのような脳内の病気を診断しておくことは重要です。まずは、MRI検査によって脳腫瘍や脳梗塞などの異常がないかどうかを確認しておきましょう。もしも、脳梗塞や後頭葉の脳血管奇形が閃輝暗点の原因であると分かった場合には、それぞれの病気の治療(内服薬、点滴治療、外科手術など)を検討します。

症状から眼の病気、網膜の病気が疑われる場合は眼科の診察を受けていただき、治療の相談をしていただきます。

以上のような病気がではないことが分かったら、閃輝暗点の発生を抑える治療を検討します。

薬で治療をする場合、閃輝暗点に続いて頭痛が発生するならば片頭痛の薬や片頭痛の発作予防薬、鎮痛薬などを内服します。閃輝暗点のみで頭痛が来ない場合にはその発生頻度と生活への支障度により薬を内服するかを相談しますが、けいれん発作を止める系統の薬を使用することが多いです。

自宅でできる対処法

ストレスや過労、睡眠不足が原因ともいわれていることから、閃輝暗点が発生したら静かな暗い部屋でおさまるまで休みましょう。携帯画面を見たりTV画面を見たりせずに休むことをお勧めします。

過労やストレスを軽減する方法が見出せるならば、対策を取ってみましょう。さらにはマインドフルネスを行うことや適度な運動習慣、規則正しい食事と睡眠をしっかりとることは、閃輝暗点や頭痛を遠ざけます。

 

閃輝暗点のある片頭痛の女性

閃輝暗点のある片頭痛の女性は前兆のある片頭痛と診断されますが、このタイプの片頭痛の人では低用量経口避妊薬(ピル)は原則使用できません。その理由として、ピルの内服により脳梗塞など血栓症のリスクが内服していない場合と比較して非常に高まるとのデータがあります。閃輝暗点が片頭痛の前兆症状なのかの診断を受けてから、婦人科の主治医とピルの内服について相談することをおすすめします。

 

閃輝暗点の予後は?

通常、閃輝暗点そのものは深刻な健康問題を示すものではありません。しかし、頻繁に発生する場合や片頭痛を伴わない場合は脳梗塞や一過性脳虚血発作などの可能性もあるため、医療機関での診察が推奨されます。

視界に異常を感じたら、まずは安静にしてどのようなものが見えていたのか、何分くらい続いたのかなどを記録しておいてください。このような症状が多くなってきたり、続いたりする場合には専門医に相談するのが良いでしょう。気になることがあれば、遠慮なく聞いてください。