院長コラム

頭部のけがによる頭痛

疾患説明

はじめに

頭をぶつけると痛む。ぶつけたのだから痛くなるのは当たり前のように思いますが、このようにぶつけたなどの直接的な頭の怪我ではないのに頭痛が起こることもあります。今回は怪我によるよらない頭痛にはどのようなものがあるのかを紹介いたします。

3つの分類と2つの状態

落としたものを拾う時にテーブルの角にゴツンとやってしまったり、子供が振り回しているおもちゃが当たったりと頭を直接ぶつけることで痛くなりますが、その多くの場合はぶつけたその時は痛いけど、あとまで長引かないような痛みで結果として大したことのないと思います。しかし、強めにゴツンと当たったり、事故に合ったりした場合には強い痛みを感じてしばらく痛みが続くこともあります。一般的に頭痛と外傷との因果関係としては、頭を受傷してから7日以内に頭痛が発症した場合とされています。

頭部外傷による頭痛の分類としては、頭をぶつけた度合いによって重症軽症に分けるのとむち打ち症があります。

重症な場合は転落したり頭を強く打ちつけたりした結果として頭蓋骨を骨折したり、脳自体にけがをしたりするような酷いケガにより頭痛が発生することで、軽症はこれほどひどくない頭部外傷になります。酷くなくてもすこし意識がもうろうとしたとか怪我の直前後の記憶がないなども軽度に含まれます。

むち打ち症は頸部の屈曲または伸展を伴う頭部の突然で十分に抑制できない加速または減速運動として定義されています。要するに頭が重いことから衝撃を受けたときにむちのように撓って頭頚部に負担がかかり怪我をすることです。自動車事故で起こることがとても多く、頭痛以外の症状としては頸部に関連した一連の症状や頸部以外の身体症状、神経感覚症状、行動、認知、気分に関する症状を伴って発現する可能性があります。

外傷による頭痛には急性頭痛持続性頭痛があります。急性頭痛とは頭痛が出てから初めの3か月間のことです。持続性頭痛とは頭痛が出てから3か月以上続いて痛む時にこれを使います。

外傷による症状のうち頭痛以外のものとしてはめまい・疲労・集中力低下・精神運動遅延、軽度の記憶障害・不眠・不安・人格変化・易怒性などがあり、このうちのいくつかが出現した場合は脳震盪後症候群であると考えます。なぜこれらのような症状が出てくるのかという原因はしばしば不明なのですが、因果関係のありそうなこととして脳内の神経軸索損傷や脳代謝変化神経炎症、脳血行動態の変化、潜在的な遺伝的素因、精神病理、頭部外傷後に頭痛が生じるという思い込みなどの関係が言われています。このような症状が出やすい人の傾向としては頭痛の既往歴や比較的軽傷の傷害、女性、精神障害の併存とされています。

外傷後に生じる睡眠障害・気分障害・心理社会的および他のストレスは頭痛の発現や永続化に影響を与えるのと、痛みを抑えるために内服している鎮痛薬の長期使用によりMOHを発症する危険性があるので注意が必要です。

基本的には怪我に対する治療に並行して痛みの部位や程度を見つつ鎮痛薬を中心とした内服による頭痛の治療を進めていきます。痛み止めの長期服用があり薬物乱用頭痛(MOH)の可能性が出てきた場合は原因になっている薬を変更して離脱するように治療を進めていきます。

外科的開頭術後に生じた頭痛

開頭手術は怪我ではありませんが、頭に直接手を加えること自体も身体(特に頭)への負担になってくるので開頭手術を受けることでも頭痛が起こります。もちろん手術直後は頭皮を切開した影響もあるので多少の痛みは付き物ですが、これに加えて開頭術による頭痛には多くの潜在的原因があるとされています。例えば、手術の際には頭の位置を長時間固定する必要があります。この手術中の体位によっては首に負担が生じることで頚原性頭痛になります。また、手術の際に脳自体を包んでいる硬膜を切る必要があり、手術終了の時にその硬膜を縫い合わせて修復する処置が不十分であると脳脊髄液漏出が生じて頭痛の原因になります。さらには手術時の諸原因による感染、水頭症、手術に関連した頭蓋内出血による頭痛などが原因の可能性もあります。これらの頭痛の多くは傷が癒えたり、原因となっていた艦船などの問題が治って解消されていれば頭痛が術後数日以内に発生したとしても早期に消失していきます。

また、脳外科の一般外来では手術後の患者さんが多く訪れます。その中でも結構多いのが脳腫瘍や脳動脈瘤などで開頭手術を受けた頭の部分を中心に頭痛がするのです。手術後の経過が安定して退院した後の外来への通院期間でも頭痛が発生するのは、開頭手術の時に頭・頸部の筋肉を処置する必要があり、その部分の筋肉が手術後に萎縮してしまうことで負担が大きくなることも影響しているようです。これらの頭痛については根本的には解消しづらいので対症療法が中心となります。もちろんMOHに注意しながら薬を飲んでいただきたいです。

おわりに

いかがでしたでしょうか?
頭の怪我はとても心配なものですね。特に脳に何か異常が出ていないか不安になると思います。また、むち打ち症などではしばらくしてから頭痛がひどくなってくることもあり、より不安感が強くなります。過去には戻れないので、早く怪我を治すことに専念していただきたいと思います。